石巻日日新聞

復興の先に向けた一歩 沖底船「第37八興丸」が完成

2017/1/26
 石巻市の「八興漁業」(阿部達男社長)は24日、石巻漁港で新造船の底びき網船「第37八興丸」(105トン、乗組員9人)を披露した。乗組員の安全対策や快適性を大幅に向上させるなど労働環境改善で水産の担い手確保を図るとともに、衛生面にも力を入れ、魚価向上に対応。同船は県沖合底びき網漁協が取り組む国の補助事業「がんばる漁業復興支援事業」に活用し、将来の水産業のモデルにも位置付けられる。操業は2月1日から始まる。

 「第37八興丸」を活用する県沖合底びき網漁協の「がんばる漁業復興支援事業」は、効率的なグループ操業による収益確保のほか、震災後の原料確保などで石巻地方の水産業復興を目指している。

 震災前、同漁協には八興漁業を含む13隻の船が所属。県北部から茨城県までの範囲で操業しスルメイカやタラ類、キチジなどを年約3万トン、約35億円を石巻魚市場に水揚げしていた。震災の津波発生時、所属船はいずれも沖で操業中だったため被災は免れたが、市場や背後地が甚大な被害を受け水揚げができなくなった。

 加えて福島第一原発事故の影響で福島以南での操業が不可能となり宮城沖でも出荷制限や漁獲物の風評被害が発生。水産業界が復興への一歩目を踏み出すには、原料を確保する底びき網漁業と流通加工業界の営業再開が不可欠だったが、各船は操業継続さえ危ぶまれる状況に陥った。

 このため漁協では平成24年9月から水産庁のがんばる漁業復興支援事業の補助を受け復興を目指すことを決定。既存船10隻を使い、5隻1組のグループ操業を実施した。27年8月までの事業期間中、燃油削減と限られた漁場での資源管理などを図ってきた。

【がんばる漁業に活用プロジェクトの柱に】
 3年間、復興プロジェクト事業を進めた結果、付加価値を高めたことによる魚価向上のほか、集団操業・操業日数減で燃油消費の削減を達成。水揚げ金額も改善していった。この間、石巻市の水産加工会社は約8割が事業を再開。すり身原料となる沖ハモなど、より沖合域に生息する魚種の安定供給が求められるようになった。

 しかし、原発事故による操業制限が続き、宮城沖に漁場が限られる中、当初の復興計画では経営改善が難しい状況に。このため漁協では既存船によるグループ操業を維持しつつ、がんばる漁業事業の新たな取り組みとして省エネや鮮度保持設備、乗組員の安全確保にも配慮した新船導入を決定した。今回の八興漁業の新船を柱として新たな復興計画を策定し、国からの採択を得た。

 通常の沖合底びき船は、船員室を海面下に配置しており、海難事故が発生した場合、避難が遅れる可能性が大きかったが、新船「第37八興丸」はこの点を改善。居住スペースを甲板上に設置し、さらに天井を高くしたことで船員の快適性を大幅に向上させた。また漁獲物用の冷海水装置や衛生管理を目的とする海水殺菌装置を導入。新市場の高度衛生管理にも対応する。

 24日は新船を係留した石巻漁港の岸壁で乗組員の家族や八興漁業の取引先、地元水産業界などの関係者約200人が駆け付ける中、景気づけの餅まきを繰り広げた。漁労長を務める及川義徳さん(49)は「若者の漁船離れが進んでいる状況を何とかしなければならない。船の形や設備が新しくなるだけではなく、教育方法や職場の雰囲気づくりでも工夫をしてやっていきたい」と話していた。

【底びき網漁】 漁船から伸ばしたひき綱に連結した漁網を曳航し、漁獲する漁法。石巻魚市場に水揚げするのは沖合、近海、小型の3タイプがあり、それぞれ船の大きさや漁場が異なる。このうち最も規模が大きい沖合底びき網の震災後の年間水揚げ高は約25億円で、市場全体の15%を占めている。9月から翌年6月までと漁期が長いことから、背後地の水産加工会社を支える基盤として重要な役割を担っている。

【写真】新船の完成を祝い、乗組員が甲板上に並んで餅まき

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