石巻市立病院 黒字化2年先送り 患者数伸び悩みと人件費増
石巻日日新聞 2017年2月15日(水) 東日本大震災で被災し、昨年9月に石巻駅前に移転再建された新しい市立病院は患者数が伸び悩んでおり、開院前の収支見通しで示した平成30年度の黒字化が困難な状況だ。市はこのほど、病院事業における29年度から4年間の中期的な将来計画である新公立病院改革プラン(案)を策定。経営効率化に取り組み、2年遅れの32年度に黒字に転換させる。
市立病院は内科、外科、整形外科など6科で診療再開。一日平均の外来患者数は9月の67.7人に対して12月は86.7人と増加傾向にあるが、収支見通しで想定した199人の半分に満たない。
一方で180ある病床の利用率については23.1%から47%ほどに上昇。3月の開設を予定した療養を除く一般140床の利用率は70%を超え、当初想定した65%を上回る。それにもかかわらず黒字化が後ろ倒しになったのは、患者の伸び悩み以上に、職員に経験者を多く採用したことでの人件費や委託経費が高くなっていることが大きいという。
南浜にあった旧病院は14診療科と数が異なるものの、震災直前の22年度が一日315.6人、開院初年度(平成9年度)でも201人の患者があっただけに、新病院はやや寂しい実績だ。ただし旧病院は建設時の不良債権があり、収支が黒字になったのは震災の直前だった。
新公立病院改革プランは、少子高齢化に伴う医療需要の変化への対応を求めた国のガイドラインに基づいて策定。新しい市立病院は現状の180床を維持し、経営の効率化へ専門外来や在宅医療の充実、地域包括ケア病床への転換による収益の確保などに取り組むことにした。
32年度の数値目標として、一日の外来患者は270人、病床利用率は療養90%、一般その他87.5%に設定。経常損益は29年度約5億円の赤字を見込むが、32年度には6千万円余りの黒字にする。
病院局は13日の市議会全員協議会で、新病院の黒字化を後ろ倒しした新改革プランを説明。議員からは見込みの甘さも指摘され、伊勢秀雄病院局長は「5、6年の空白があり、開院したからすぐに結果を出せといわれても厳しい。少しずつ実績を積み上げており、計画の数字は十分に達成できるものとして動いている」と述べた。
牡鹿病院も同プランの対象になっており、25の一般病床を30年度中に20床に変更し、31年度にこのうち10床を包括ケア病床に転換する。現在の病床利用率は32%ほどで、震災による人口減少に伴う患者数の減少を考慮しつつ、地区で唯一の病院としての機能を維持。在宅医療や訪問看護の実施などにより32年度までに黒字化させる。
プランでは2病院の圏域内での役割を明確にし、へき地医療を行う公立病院として病院事業への一般会計の負担の考え方も示した。また、30年度を目標に市立2病院と健康部所管の4診療所による「医療局」の組織化を明記。診療所は医師確保が難しい状況で、人材の効率的な配置を進めるとともに情報通信技術を用いて医療情報の連携体制を構築する考えだ。
プランは3月6日まで意見を公募した上で、年度内に策定。新しい市立病院の実績が少ない中での策定となるため、必要に応じて改定することにしている。
【写真】石巻駅前に移転再建された市立病院は、開院して間もなく半年になる
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