石巻日日新聞

貞山小で南極クラス 元観測隊 井熊さん講演

石巻日日新聞 2017年2月25日(土)

 南極観測隊を4度経験し、現在はミサワホーム総合研究所(株)=東京都=の南極研究プロジェクト主幹研究員を務める“南極熊”こと井熊英治さん(47)の「南極熊の南極クラス」が23日、石巻市立貞山小学校(村石好男校長)で開かれた。「未来を背負う子どもたちに夢と希望を届ける」をテーマに、4―6年生105人が遠い極寒の世界に思いを馳せた。

 スポーツ庁と筑波大学の委託によるオリンピック・パラリンピック教育の一環で実施した。南極観測隊は南極大陸の天文や地質、生物学を調査する部隊。井熊さんは第47、50、52、53次の計4度参加し、延べ3年4カ月間にわたり設営、建築部門で活躍した。講演では基地での暮らしや動物、自然の不思議について語った。

 日本と南極は約1万4千キロ離れており、到着までには3週間以上かかる。船は荒れ狂う海や流氷を割って進むため「ひどい時には左右80度以上の揺れがある。中には船酔いで嘔吐(おうと)が止まらず、体重が10キロくらい落ちる人もいる」と過酷さを伝えた。また、「これまでに体験した最低気温は氷点下58・0度」と語ると児童から驚きの声が上がった。

 その後、凍って割れないシャボン玉など極寒の地ならではのユニークな実験映像を披露。ブリザードやホワイトアウト、太陽が沈まない白夜のほか、オーロラの映像もあった。井熊さんは「テレビで見る映像は音楽にだまされているだけ。無音でももちろんきれいだけど、怖いし、気持ちが悪い」と笑いを誘った。

 途中には南極から持ち帰った約2万年前の氷が配られ、子どもたちが触るなどして、地球のロマンを感じた。

 講演を通じて、井熊さんはチームワークの大切さも伝えた。「1業種1人しかいない観測隊では、皆の協力がなければ何にもできない。嫌いな人だって大切な仲間。感謝しかない」と語った。

 さらに「観測隊員もかつては君たちと同じ小学生だった。だから、君たちにもたくさんの可能性がある。良い学校や会社に入るためではなく、夢の枠を広げるために目の前の勉強に励んでほしい」と呼び掛けた。

 授業前に「寒そうだから行きたくない」と話していた6年1組の佐々木希琉さん(12)も講演後には、「空の色を反射している氷山やオーロラがとてもきれいだった。怖いけど、興味もふくらんだ」と胸を躍らせていた。

【写真】2万年前の氷に興味津々の様子だった

最終更新:2017年2月25日(土)

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