郷土の偉人 大槻俊斎に光 地域一丸で副読本製作
石巻日日新聞 2017年3月10日(金) 東松島市立赤井小学校と同校PTA、地域が連携し、小学生向けの志教育副読本「大槻俊斎」を発行した。8日にはプレセティア内康=同市大曲=で完成披露式が開かれた。俊斎(1804―1862年)は地元出身の医師で、近代医学の礎を築いた一人。副読本はその生涯を分かりやすく紹介しており、市内各小中学校や行政、教育機関などに配布し、子どもたちの郷土愛を育んでいく。
江戸時代後期に赤井村(現東松島市赤井)で生まれ育った俊斎は当時では珍しかった西洋医学を習得。猛威を振るった天然痘の種痘を広め、東京大学医学部の前身の西洋医学所頭取となった。東松島市内に銅像や記念碑はあるが、顕彰には至っておらず、副読本は偉人を通じて地域への関心を高め、志を持った児童の育成につなげる目的で作った。
自治体や教育委員会が主管する副読本はあるが、編集から発行まで市民のみで取り組んだケースは全国でも珍しい。同校は昨年、俊斎プロジェクト(山﨑恵章委員長)を立ち上げて関連資料を集め、物語の書き起こしから始めた。
教職員も物語の製作に加わり、読みやすさと親しみやすさに重点を置いた。さし絵もPTA会員が描き、物語、人物、学校教育の3編でまとめた。A4判フルカラーで56ページ。970部作ったほか、低学年用に紙芝居(20場面)も作った。
事業費は活動に賛同する団体や歴代PTA会長の寄付、児童もイベント会場で募金を集めるなど地域一丸で取り組んだ。同校も学習発表会の演劇や講演、史跡見学を通じ、児童に地域が生んだ偉人の功績を伝えてきた。
披露式には関係者や来賓計約50人が出席。山﨑委員長が「副読本が長く活用され、子どもたちの成長の一助になることを願う」とあいさつ。工藤昌明教育長は「とても素晴らしい出来であり、学校教育資料としても文化財的な価値がある。思いが一つになった成果」と称賛した。
感謝状贈呈では事業費支援、資料提供などに協力した市建設業協会、東松島ライオンズクラブなど3個人2団体に贈られた。また赤井小の木村玲子校長は映像を使って活動の歩みを紹介し、地域力の高さが製作の鍵だったことを強調した。
【写真】会場内に副読本の製作工程が分かる展示コーナーも設けた
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