被災者100人ミュージカル 5年前の映像 地元で上映会
石巻日日新聞 2017年3月23日(木) 東日本大震災の被災者ら石巻地方の約110人によるミュージカル「とびだす100通りのありがとう」として、発災から1年後の平成24年3月に東京の銀座で公演された時の映像の上映会が20日、石巻市の遊楽館で行われた。鑑賞した約300人が当時の思いに触れ、災害の記憶や世界中からの支援への感謝を忘れないことを改めて心に刻んでいた。
ミュージカルは、石巻地方の市民有志が実行委員会を立ち上げ、当時3―83歳の112人が演じた。各々の被災体験とともに津波に負けずに強く生き抜く決意が語られたほか、世界中に対するありがとうの言葉を歌や踊りを交えて伝えた。
銀座での舞台を見た人はもちろん、見ることができなかった地元の人たちにもその場のムードに浸ってもらおうと、公演から5年目の今月、映像上映会を開いた。
上映に先立って構成台本、演出、音楽、美術の一切を手掛けた寺本建雄さん=東京都小平市=がミニコンサートを開催。世界屈指の腕前であるリコーダーや、瓶を使った演奏などで会場を沸かせた。
また、出演者の一部に新たなメンバーを加えた約40人でミュージカルナンバーを披露。会場参加型となっており、来場者も出演者の気分になって両手を上げるポーズを決めた。
映像とコンサートから出演した子どもたちの成長が感じ取れ、約3年前に亡くなった最高齢の簡野たえさんは作品の中で生き生きしていた。客は映像に合わせて手拍子や拍手を送り、5年前を思い出して涙ぐむ人もいた。
美里町の保育士、大石きよ子さん(63)は初めて鑑賞し、「震災の体験でみんなつながっており、地域に何か起こそうという力を感じた」と感想。東松島市野蒜地区で被災した女性は「あの頃は心にしまいこんでいたが、今なら話せそうな気がする」と前向きな気持ちになっていた。
上映会はこの映像を各地で上映する東京都のNPO法人「東日本大震災を風化させない会・100通りのありがとう」と、地元の百俵館を運営する石巻・川の上プロジェクトの共催。両者が手を組んだ「100☆百☆飛躍プロジェクト」の旗揚げイベントとし、杉山雅昌行代表はあいさつで「東京公演から名前を変え、形を変え、メンバーを変えて一昨年はニューヨークでも歌を披露した。また新しい形でまちを元気にしたい」と語っていた。
【写真】上映前のミニコンサート。来場者も歌の終わりに両手を上げるポーズを決めた
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