大川小控訴審始まる 県・市は予見可能性否定
石巻日日新聞 2017年3月30日(木) 東日本大震災の津波で石巻市立大川小学校の児童、教員計84人が犠牲となり、このうち児童23人の19遺族(29人)が市と県に23億円の賠償を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が29日、仙台高裁(小川浩裁判長)であった。両者が津波の予見性について改めて主張した一方、裁判所側も防災対策に関する新たな証拠の提出を双方に指示。当時の教員だけでなく、市教委の事前対策などより広い視野で判断する姿勢を示した。
この日の弁論で遺族側は、市の広報車が津波来襲を伝えた段階での予見を認めた一審判決について、「大津波警報発令時などより早い段階で予見できた」と主張。加えて、遺族6人が意見陳述し、「二審では予見可能性だけでなく学校防災にまで踏み込み、第二の大川小を出さないための礎になってほしい」などと声を震わせた。
一方、市と県は合同で準備書面などを提出。教員の過失を認める原判決を不服とし、「想定を超える津波襲来の予見は義務付けられない」「裏山への避難は山崩れ、がけ崩れの危険があり、当日にも注意喚起されていた」と反論した。
弁論後の進行協議では、裁判所が遺族側に教育組織と教員に望まれる平時の防災対策を、また市・県側には原判決で法規範性が認められなかった危機管理マニュアルについて整備と実施にかかる市教委や学校の事務的手続きの経緯などを示す証拠の提示を求めた。
閉廷後の記者会見で遺族側代理人は「地裁では教員一人一人の判断が議論されたが、高裁は災害発生前に問題がなかったかに着目している。我々が一審で主張してきた点であり、歓迎すべきこと」と話した。
会見に出席した遺族8人からも学校を運営する組織の在り方を問うことに期待の声が上がった。原告団長の今野浩行さん(55)は「命は失えば戻ってこない。命を最優先に考えた組織運営につながってほしい」と述べた。
なお、市・県側は24日付で提出した審議計画書で、唯一の生存教諭の書面尋問を求めたが、遺族側は「書面では反論ができない」としてこれに反対の姿勢を見せている。
石巻市の亀山紘市長は控訴審に際し、「代理人、県と協議しながら真摯に対応する」とコメントを発表した。
次回口頭弁論は5月16日に行われる。
【写真】閉廷後の会見に臨んだ遺族ら
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