石巻市長選2017 将来見据えた復興の完結が命題
石巻日日新聞 2017年4月15日(土) 任期満了に伴う石巻市長選(16日告示、23日投開票)は3選を目指す現職の亀山紘氏(74)、新人で前回も立候補した元東北大学非常勤講師の青木満里恵氏(62)と元市議会議長の阿部和芳氏(57)、初挑戦となる元市議の黒須光男氏(69)の4氏による争いが濃厚で、各陣営が激しい前哨戦を繰り広げている。次の任期は震災復興基本計画(平成23―32年度)の最後の4年間と同じ。これを確実に終わらせ、復興支援がなくなるその後の持続的発展にどう備えるかが命題であり、現市政の継続か刷新かが問われる。 (熊谷利勝)
市内では住まいの再建を最優先に復興事業が行われ、復興(災害)公営住宅は3月末現在、4700戸の計画に対して3673戸が完成。割合にして78.1%で、東松島市の74.1%、女川町の56.3%を上回っている。
7153戸が建設された仮設住宅は、30%を切る2138戸まで減少。住まいの再建が市民の復興の実感につながっているようで、28年度意識調査では過半数の52.1%が「進んでいる」と答えた。
復旧復興費用は10年間で1兆1千億円の見込み。うち復興公営住宅の整備費は1500億円余りにのぼる。空きもあり、黒須氏は「復興公営住宅は不要なものが多い。市でつくらず、民間から借り上げることで民間の活力が生かされる」と行政の無駄の排除を掲げる。青木氏は復興公営住宅入居後の地域社会づくりに着目し、「人の輪の構築が重要。老若男女のサークル活動などを推進したい」と訴える。
遅れているのは、半島沿岸部の防災集団移転や行政、商業、観光機能などを集約整備する拠点エリア整備。現職の亀山氏は「住まいの復興は一定の見通しがついた」とし、本年度に新設した半島復興事業部で集中して半島沿岸部の復興を加速させる方針。これに対して半島部に住む阿部氏は「各浜の歴史文化を見ずして画一的に進めるのは誤り」だとして、住民の声を聞いた上での事業の仕分けにより早める考えだ。
27年国勢調査による市内人口は14万7214人で、震災前の22年から1万3612人の減少。旧市内だけで1万人近く減ったが、雄勝は4分の1ほどと半島沿岸部の人口減少が顕著だ。
人口の減少は経済の縮小を招く。農村漁村の維持には、第1次産業の担い手確保が重要。移住、定住を進めるにも受け皿となる住まいや新たな産業創出が必要だ。空洞化する中心部のにぎわいづくりや、広域的な連携の中での観光やスポーツ・文化振興による交流人口の拡大も欠かせない。
復興はある程度レールに乗っていて、それをどう進めるかは各候補者の違いを見出しにくい。しかし、「国の支援がなくなったら、財政が破たんしました」では話にならない。復興後の市の将来像を打ち出し、市民とともに知恵と工夫で実現に取り組むリーダーが求められる。
【写真】告示間近で、有権者に選挙への関心を呼び掛ける懸垂幕
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