石巻日日新聞

【石巻・東松島市長選】復興の総仕上げ担うリーダー確定

石巻日日新聞 2017年4月24日(月)

 任期満了に伴う石巻市長選と東松島市長選および東松島市議選(定数18)、議員の辞職による石巻市議補選(欠員2)は23日に投票が行われた。即日開票の結果、石巻市長選は現職の亀山紘氏(74)が3選を果たし、東松島市長選は元県議の渥美巖氏(69)が初当選した。当日有権者数は石巻市が12万3918人(男5万9751人、女6万4167人)、東松島市は3万3060人(男1万6085人、女1万6975人)。両市とも今後4年間は復興の総仕上げにあたり、その後の市政発展を見据えたかじ取りをだれに任せるかを問う重要な選挙に位置付けられた。しかし、4人が立候補した石巻市は有権者の反応が鈍いまま投票日を迎え、投票率は44.31%と合併後最低だった前回(44.16%)とほぼ変わらなかった。一方、12年ぶりとなった東松島市長選は、新人3人の争いに有権者の関心も高く、市議選とのダブル選効果もあって62.65%。それでも12年前の75.13%を大きく下回った。

■石巻市は亀山氏が堂々3選
 石巻市中里の亀山事務所には23日午後8時ごろから支持者が集まり出し、緊張の面持ちで開票を待った。開票が進むとともに表情はほころび出し、11時半過ぎに「当選確実」の一報が入ると拍手と歓声で沸いた。

 間もなく到着した亀山氏と紀子夫人は、祝福の言葉と握手攻めで迎えられ、集まった全員で万歳三唱。及川衞選対本部長は「継続か、変革換かが問われた選挙戦。復興を着実に進行させてきたことを訴えてきたが、まさに継続の立派な審判をいただいた」と勝利宣言した。

 3選の願いをかなえた亀山氏はダルマに目を入れ、女性支持者から贈られた両手いっぱいの花束に包まれた。

 満を持した当選あいさつでは「市民から早く復興を成し遂げてほしいという圧倒的な意見をいただき、与えられた責任の重さを感じている。復興とその先の地方創生に取り組み、人口減少を食い止めるのが課せられた使命。市民、市議会、県政・国政を担う方々とともに石巻の発展に尽くしたい」と決意表明。さらに「感情の高まりで、うまくしゃべれない」と和ませた。

 それでも、支持者と勝利の喜びを分かち合ったセレモニー後は、「復興を加速するために、選挙戦でたまった決済を急がないと」と気持ちを切り替えた。

【写真上】圧勝で3選を果たし、ダルマに目入れをする亀山氏(23日午後11時45分ごろ)

■亀山氏インタビュー
市民と一緒にまちづくり 半島復興加速へ現場に赴く
 3選を果した亀山市長は日付も変わった24日午前0時すぎ、事務所に詰めかけた報道陣の一問一答に答えた。
   ※  ※
 —当選した今の率直な気持ちは。
 亀山市長 大変厳しい選挙戦だった。その中で勝つことができたのは、市民に継続を選んでいただいたためであり、心から感謝したい。今後4年間で復興を成し遂げなければならないと強く感じており、責任の重さをかみしめている。

 —選挙戦で市民から感じたことは。
 亀山市長 一番多かったのは、復興を早く何とかしてほしいという意識。地域ごとにさまざまな意見をいただいたので、これから実行していきたい。また、課題も得られた。

 —次の4年間はどんなかじ取りをするのか。
 亀山市長 2期8年、市政運営を進めてきたが、これまでと同じように話し合い、市民と一緒になってまちづくりを進めたい。住まいの再建は一定の見通しがついたので、残された課題は半島沿岸部の復興。私自身現場に赴き、職員と一体で、また、企業の意見を聞きながら加速したい。

 —前回並みの投票率をどう思うか。
 亀山市長 分析して原因を自分なりに考え、市政に反映することをしたい。

【解説】満点でないが及第点(熊谷利勝)
 石巻市長選の投票率は前回並みの約44%と伸び悩み、有権者の関心が最後まで高まらなかった。復興の完結は命題であり、具体の争点がなかったためだ。その中で自民、民進の推薦を得て、さらには共産の自主支援と、「オール石巻」とする盤石の体制を築いた亀山氏が圧勝した。

 3選を目指した現職に新人3人が挑む構図で、現職に対する批判票は分散。亀山氏と次点は約1万6千票の差が付き、前回の差からさらに約2700票開いた。亀山氏は今回も投票者の半数を超える得票となり、新人は3人の票を足してもかなわない結果だ。

 具体の争点が見えず、有権者が投票先に迷う選挙。結果、2期8年の実績がある亀山氏は無難な選択肢になった。派手さはないが、着実に復興を進めてきた現市政に有権者が及第点を与えた格好だ。

 選挙期間中の個人演説会は、地元選出の衆院議員や県議が交代で弁士を務めるなどして現市政の継続を後押し。ただ、本人も半島部の復興の遅れを認めている通り、満点を与える人は多くはない。

 「復興を成し遂げたい一心だ」と3期目に立候補した亀山氏。被災者もそう願っている。前回に続き2人に1人は投票を棄権したことを重く受け止めなければならない。


■東松島市 政治経験豊富な渥美氏初当選
 「渥美巖さん、1万200票」—。開票速報を報じる陣営関係者がマイクで叫ぶと、吉報を待つ支持者は歓喜に沸いた。23日午後10時40分、東松島市赤井の選挙事務所に隣接する自宅から姿を見せた渥美氏は「市民の期待にそうように全力を尽くす」と新市長としての決意を語った。

 ダルマの目入れ、家族から花束が贈られた後、山田達夫選対本部長が感極まって言葉を詰まらせながら「迷惑をかけたが当選できた。これからも支えてほしい」。阿部秀保市長は「安心して任期満了(28日)を迎えられる」と語り、二人三脚で復興を進めてきた渥美氏と硬い握手を交わした。

 渥美氏は「多くの人に感謝したい。急な出馬でも組織を立ち上げて守ってくれた。阿部市政を継承し、選挙で掲げた7つの公約を進めながら復興加速と完結を目指す。東松島市を復興のモデル市にしたい」と強調した。

 選挙戦は政党や組織だけに頼らず、自らの足で支援を訴えた渥美氏。日焼けした顔がそれを証明していた。

【写真下】阿部市長と握手を交わす渥美氏(23日午後10時50分ごろ)

■渥美氏インタビュー
「市政継承」支持された 避難道路など優先着手
 新人3人による激戦を制し、県議から東松島市長となる渥美氏から市政リーダーとしての決意を聞いた。
   ※  ※
 —初当選の気持ちは
 渥美氏 市民に感謝したい。そして後援会や選対には苦労をかけた。議会との調整を図り、市民のための市政を運営していく。
 —戦いを振り返って
 渥美氏 出馬が遅れたほか、組織があっても「顔が見えない」と言われ、4月に入ってから後援会加入を進めるなど1日2万5千歩以上歩いた。告示前の囲む会も18回開き、浸透を図ってきた。
 —勝因は
 渥美氏 阿部市政の継承が認められた。それと県政と市政をつないだ22年間の活動も評価され、スポーツ団体も支えてくれた。政党推薦も大きく、村井嘉浩知事や阿部秀保市長らの支えもあった。
 —選挙後のしこりは
 渥美氏 市民以上に市議会が危ぐされているが、理解は得られると思う。時間はかかっても大人の対応に期待し、しこりを残さないようにしたい。
 —何から取り組むか
 渥美氏 復興事業の中でも用地買収や避難道路など遅れている事業を加速させる。県の事業も進めたい。そして市民ファーストの思いで市民の声や要望を聞いていく。
 —独自色は
 渥美氏 企業誘致をはじめ、県とさまざまな形で連携する。財政も競争化の時代。国とのパイプを生かして予算を獲得していく。
 —県議補選の対応は
 渥美氏 私が開けた穴で誰が良いとは言えない。大所高所から市民が判断するが、市長と県議は二人三脚が望ましい。

【解説】県議の積み重ね浸透(外処健一)
 渥美氏の出馬は2月末。元市議の2陣営からは「後出しじゃんけん」と批判され、支持者の重複は混迷も招いた。前哨戦は渥美氏が優勢に見えたが、選挙戦突入後は木村氏の巻き返しが激しく、終盤はもつれた。

 勝因は渥美氏の圧倒的な知名度と組織力だけではない。県議時代からスポーツ大会や地域の会合など大小問わず顔を出し、無欲で市民と関わってきた。距離感の近さに親しみを持つ市民は多く、6期22年の積み重ねが無党派層にも浸透した。

 東松島市は防災集団移転事業が進み、住まい再建は整いつつあるが、観光業の立ち遅れや企業誘致、就労の場など人口減少も含めて対応はこれから。コミュニティー再生などソフト事業も待ったなしの課題が多い。

 市の復興発展期も残り4年。新市長には復興の完結が求められ、その先を見据えたまちづくりの指針にも注目したい。語った夢を実現させるのが政治家。批判にも耳を傾け、市の一体感を醸成する政治手腕が問われている。

最終更新:2017年4月24日(月)

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