石巻日日新聞

石巻地方初の事業所内保育所 湊水産運営「結のいえ保育園」

2017/5/4
 石巻地方では、子育て世代を取り巻く環境に東日本大震災の影響が色濃く残り、課題も多い。特に核家族化の進展で子どもを預けることが難しく、働きたくても働けない母親が増加。それが企業の人手不足と家庭の困窮を引き起こす悪循環を招いている。この改善に向け、注目を集めているのが、企業が事業所内に保育機能を持つ事業所内保育。先進的に取り組む事業所を取材した。

 石巻市吉野町のたらこ製造業、湊水産(株)は震災で社屋と工場が被災。営業再開後も、多くの水産加工会社と同様に人手不足に悩まされた。従業員の8割は地域の女性だが、震災で周辺の世帯数は激減。製造を本格化したくてもできないジレンマを抱えた。
 「働きたくても働けない女性たちにどうしたら働いてもらえるだろうか」。木村一成社長が悩んだ末に導いた結論は事業所内保育所の設置。決して大きくはない同社にとって保育所開設に多額の資金を投じるのには、相当な覚悟が必要だった。
 市内の認可外保育施設が撤退するという話を聞き、保育事業の引き継ぎを打診。社屋改装とともに保育部を新設し、保育士ら4人を採用した。そして平成28年3月、石巻地方で初となる事業所内保育所「結のいえ保育園」を開所し、人手確保への希望を託した。
 同時期に2人の欠員補充のため求人を出し、書類に「託児可能」の言葉を加えた。「来てくれるだろうか」という不安とは裏腹に、約1カ月で20人を超える応募が寄せられた。木村社長は「水産加工だから人が集まらないのではない。環境さえ整えば人は集まる」と驚きの中で気づかされた。

■待機児童は増加の一途

 内閣府では、28年度から企業主導型保育事業の補助制度をスタート。多様化する働き方に応じた保育サービスを展開することで、企業の人材確保と女性の活躍を推進する。同社も同年11月に認定を受け、今年7月完成予定の園舎建設費の一部と運営費が補助された。
 市の待機児童は26年度21人、27年度45人、28年度62人と年々増加し、本年度もさらに増えている。公立保育所の復旧や民間保育事業所の拡充で受入児童数は増えてはいるが、保育士確保が難しい中で0―1歳児は保育希望数に対し、受入数は伸びていない。
 そんな中、事業所内保育所は設置事業所で働く従業員の子どもはもちろん、地域の提携企業で働く従業員の子どもも受け入れる。また、従業員の子どもが待機児童となることを避けるため、事前に受け入れ枠を確保できるなどの利点もある。
 同園の佐々木芳美園長は「親子双方にとって安心は最大のメリット。保護者が同僚でもあるので、緊急やどうしても手が足りない時は“第二の保育士”としてお手伝いも頂ける」と話す。一方で課題は資金面とし、「建物、職、保育士を確保しなくてはいけず、ハードルは低くない」と言及する。
 それでも子どもたちに「たらこ先生」と慕われる木村社長は、すくすくと育つ子どもたちとイキイキと仕事と子育てを両立する従業員の姿に「子どもや人がいないと企業も地域も未来を語れない」と強調。「子育てに不安がなく、心から喜べるまちにしないと」と理想の地域像を描く。

■環境整え人材確保

 人材の言葉に“人財”という漢字が当てられるように、人口減少が進む中にあって子どもも、働き手となる母親も貴重な地域の財産だ。湊水産の事例が示しているのは、環境さえ整えば働きたい女性たちの多さであり、同時に働きたくても働けない子育て環境の実情でもある。
 子育て世代の流出が将来の人口減少に拍車をかけることは言うまでもなく、本来であれば一企業が解決を担うべきものでもない。増え続ける待機児童の解消と産業の再生へのヒントが見えた今、満たすべきニーズへの一手が望まれる。

【写真】「安心して子どもを産み育てられる地域になってこそ復興」と語る木村社長

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