石巻日日新聞

みんなで残そう 川開きの景色

陸上イベントの名脇役 七夕飾り存続へ協力呼び掛け

石巻市 教育・文化 近江 瞬 2017年6月28日(水) 15時15分
4年ぶりに七夕飾りが復活した際の石巻川開き祭りの様子(平成27年8月1日)

 石巻市で生まれ育った人たちにとって「石巻川開き祭り」を彩る七夕飾りは、かけがえのない思い出の夏の景色だろう。その飾りは東日本大震災後の一時休止を経て、「もう一度あの景色を」という若者たちの呼び掛けで一昨年に4年ぶりに復活した。それでも存続には制作を担ってきた商店主らの被災や高齢化など課題は山積している。せっかく取り戻した大切な夏の原風景を今後も残し伝えるために今、地域の協力が求められている。

 川開きの七夕飾りは震災以前まで、アイトピア商店街の店主らが自主的に人手と資金を出し合って制作を続けてきた。しかし、震災では店主らとともに吹き流しなどの飾りそのものも被災。祭りの継続の陰で飾りは中断を余儀なくされた。店主らは「できるならまた作りたい。でも今の私たちには負担が大きすぎる」と口をそろえ、市民が「復活してほしい」と願っても、これまでの在り方ではもはや再開は困難だった。

 そんな中で平成27年の夏、中心市街地のまちづくりに取り組む一般社団法人ISHINOMAKI2.0が思い出の景色の復活へ動き出した。中心となったのは同法人に所属し、中心市街地に生まれ育った近江志乃さん(34)。近江さんにとって古里の景色そのものとも言える七夕飾りを「私が復活させる」と立ち上がったのだ。

 それからは同法人が震災後、毎年夏に開催してきた「STAND UP WEEK」の一企画として「みんなの七夕」をスタート。商店街や地域住民にワークショップへの参加を呼び掛け、その年の夏には人々のにぎわいの上で4年ぶりに風に揺れる飾りが通りを染めた。

 昨年も2年連続で七夕飾りを継続できたが、存続への課題が解決されたわけではない。同法人のスタッフや商店主らはあくまでサポート役であり、最終的に主役となるべきは地域に暮らす一人一人。誰かが後継者となるのでなく、地域で継承していくことが求められている。

ワークショップも実施

 地域一体での継承へ向け、今年も同法人と商店街の主催で今月20日から、七夕飾りのワークショップが始まった。毎週火曜日の午後6―8時に会場の石巻市中央二丁目のコミュニティカフェ「IRORI石巻」となり、スタッフの指導のもとで人々が七夕飾りを彩る花を作っている。

 また、学校や企業、町内会などの団体単位での制作協力も受け付けており、すでに復興公営住宅の集まりや、小学校・保育所なども手を挙げている。制作にかかわる材料は支給され、希望があればスタッフが訪問してワークショップも行う。

 完成した飾りは7月31日―8月1日の川開き祭りで一斉に飾られ、人々の思い出の1ページを彩る。

 近江さんは「年に一度の川開きの光景は、商店主の心意気だけでは保てないところまできています」と説明し、その上で「あの風景を、世代を超えて残すために皆さんの協力が必要です。汗を流して一生懸命に演奏する子どもたちの頭上にずっとあの景色を作ってあげましょう」と呼び掛けている。

 申込み、問合せはイシノマキ2.0の近江さん(電話0225-25-4953)まで。

最終更新:2019年6月3日(月) 20時16分
石巻市 > IRORI石巻

新着記事